こちらでご紹介するのはあくまで一例です
サワー種仕込みのライ麦パンとは?
サワー種(酸生地)を使って焼いたライ麦パンのことです。
サワー種は、パンの発酵や焼き上がりに影響する点で、リンゴやレーズン等の天然酵母に似ています。
サワー種、天然酵母、イースト、どれを使ってもパンは焼けます。
何を使うかは自由なのですが、ライ麦比率の高いパンを焼く時は「サワー種」が必要です。
ライ麦パンにはサワー種を使うよ!
サワー種とは?
サワー種とは、初種に小麦粉やライ麦粉と水を混ぜてしばらく放置し、酸化させた生地(=酸生地)のことです。
ライ麦粉を多く使用するパンを焼く場合、「製パン性の低さ」を補うため、このサワー種の力を借りる必要があります。焼き上がったパンの風味や保存期間にも好影響を及ぼします。
初種+水+ライ麦粉で仕込んだサワー種は、小麦粉で仕込んだものと区別するため、敢えて「ライサワー種」と呼ぶこともあるよ
初種とは?
初種作り
レッスンでは家庭製パン向けの分量で作ります
起こし方、保管方法もお伝えします
初種とは、サワー種をつくるために微生物を取り入れた種のことで、大きな括りでいえば、初種もサワー種の一種と言えるでしょう。一般的なレシピ本やサイトでは「サワー種の元になるもの(スターター)」等と説明されている印象です。
初種を入手する方法は、大きく分けて「自分で作る(自家製)」と「市販品を買う」の2つです。
当教室では「自家製」を採用しています。
理由は「安価でカンタンだから」。
「市販品」の入手経路に悩む時間があれば着手できてしまいます。
もちろん、サワー種の元になるものですから、純度や鮮度が優れているに越したことはありません。ですが、もし最高品質の初種を手に入れたとしても、使用、保管、種継ぎをする環境が一般家庭のキッチンである限り、そのクオリティを保つのは不可能に近いでしょう。
雑多な言い方になりますが、家で作り、家で食べるものであれば、その家になじむやり方で仕込めば良い、と個人的には考えています。ぬか漬けや塩麹、ジャムやチーズなどもご家庭で楽しめます。初種も同じです。最初のうちは失敗もありますが、自分でやり方さえ知っていれば、何度でもやり直せます。(もちろん、自家製と市販品、どちらを選ぶかは自由です。)
サワー種の名称について
ザワータイク(Sauerteig/ドイツ)、サワードゥ(sourdough/アメリカ、イギリス)、ルヴァン(levain/フランス)といった言葉。これらは全て「サワー種」を指します。そもそもサワー種には様々な調整方法があり、また、種の状態(初種、仕上げ種など)ごとに名称が変わるのです。
サワー種の名称一覧表
日本 | ドイツ | 英米 | フランス |
サワー種 (酸生地) | Sauerteig | sourdough | levain |
初種 | Anstellsauer | starter sour | chef |
仕上げ種 | Vollsauer | final sour (full sour) | levain de tout point |
本捏生地 | Teig | dough | pâte |
名称の使い方について
私がライ麦パンを焼き始めた頃、レシピを見ても頭にスッと入ってこない事がよくありました。
今考えると原因は2つ。
1つは、私の知識不足。
もう1つは、名称の使い方がバラバラだから。
例えば、ライ麦70%パンを焼くためにレシピを見ると、初種の表記は「スターター」。一方で、別のレシピでは「シェフ」と表記されている…等、指すものは同じ「初種」なのに、名称の使い方は作成者次第ということが多々あります。「シェフ=初種」を知らない人には、「シェフって何?」から調べることになるわけです(私がそうでした)。
仕込みとは?
仕込みとは、パンを焼くための準備です。
道具や機械に不具合が無いかを確認し、材料をそろえておきます。
ライ麦パンなら、サワー種の調製や、ドライフルーツや雑穀などの前処理も仕込みに当たります。
サワー種の調製とは?
サワー種
焼く前日に仕込んだサワー種
仕込んだサワー種はお持ち帰りOK
サワー種の調製とは、初種に材料(粉、水など)を加えてサワー種を作り、一定条件の元にねかせておくという作業です。必要な「量」と時間や温度などの「条件」は、パンの種類とサワー種の調整方法によって変わります。
どうも~。ライ麦比率80%のロッゲンブレートヒェンでーす
加塩法、(多)段階法によるサワー種の調製例
具体的に、ライ麦80%+小麦20%で焼く場合を、3種類の調製方法で比べてみましょう。
調整の方法
※ 他にも、ベルリン短時間法、ヴァンハイム一段階法といった色々な調整法が存在する
調整例の一覧表
ライ麦:小麦 80:20 (粉100kg) | 加塩法 | 3段階調整法 | デトモルト1段階法 |
---|---|---|---|
1段階 | |||
温度 | 35℃→20℃ | 25~26℃ | 20~23℃ |
ねかし時間 | 22~24時間 | 14~20時間 | 15~20時間 |
初種 ( * ) | 10.8kg | 0.5kg | 6.4kg (20%) |
ライ麦粉 | 27kg | 1.3kg | 32kg [ ● ] |
水 | 27L | 1.7L | 25.6L |
食塩 | 0.54kg | – | – |
総重量 ( * ) | 54.5kg | かえり種 3.0kg [ ★ ] | 57.6kg |
↓ 2段階 ( 24~26℃ / 4~20時間) [ ★ ]にライ麦粉と水を加え、もと種21.5kg[ ★★ ]を作る ↓ 3段階 ( 30~32℃ / 2.5~3時間) [ ★★ ]にライ麦粉と水を加え、仕上げ種76.0kg[ ★★★ ]を作る | 初種の量 ( %の数値は[ ● ]に対する初種の割合 ) 24~26℃ / 3.2kg (10%) 26~27℃ / 1.6kg (5%) 27~28℃ / 0.64kg (2%) | ||
特徴 | ・加塩する ・長期保存 ・常温可 | ・しっかり熟成する ・イースト不要 | ・温度管理が必要 |
家庭製パン向けかどうか | ◎ | △ | 〇 |
(*)…初種の量は、完成したサワー種から次の仕込みの初種用として、同量を分取するので、総重量には含めない
上の表では、「初種」の量を比べてみてください。
加塩法では10kg、3段階法では0.5kgです。
全然違います。
調整法を勘違いして計量ミスった、では済まされない量です。サワー種の調製が製パンに影響を及ぼす、ということが分かります。
一方で、調整法を決め、その工程に従って作業できればサワー種が完成します。もちろん、ブロート(大型パン)でもブレートヒェン(小型パン)でも、ライ麦比率が多い少ないに関わらず対応できます。私たちが目にするライ麦パンのレシピも、多少のアレンジはあるにせよ、元をたどれば1つの調整法に行きつくことになるはずです。
では、サワー種の調製方法を、どうやって決めるのか?
ライ麦パン作りの初心者にとって、ここが悩みどころではないでしょうか。
結局のところ、「調整方法を知ること」が決定までの最短ルートになるでしょう。とは言え、全ての調製方法を片っ端から学んでいては、それだけで相当な時間を要します。
そこで、当教室では、まず家庭製パンに適した「加塩法」をお伝えしています。「うまくできた!」という成功体験を積み重ねていくことで、スキルの幅は自然に広がっていく事と思います。
なぜ「加塩法」なのか?
加塩法を選ぶ理由は…
当教室が「加塩法」を採用している経緯について触れておきます。
まず、多段階法は早い段階で採用を見送りました。
理由は、「時間がかかりすぎる」から。
①冷蔵保管していた初種の活性化(1~2日)→②初種に粉と水を足し、温度管理しながらサワー種の調整に(2~3日)→③ようやく焼成です。
段階ごとの作業は少ないかもしれないが、子持ちの一主婦(私です)が家庭で楽しむにしては手間がかかり、長続きしないと感じました(ゆっくりと熟成させた生地がおいしくなるのは間違いないのですが…)。
で、手順が簡単なデトモルト一段階法でしばらく続けていました。
…が、「温度管理が難しい」ため、今はあまり使っていません。
当初、冬と夏で初種の量を変えれば良いだろう、程度に考えていた所、ここ数年、春なのにいきなり真夏日になる、みたいな異常気象がふつうに起こるわけです。ある年の夏、温度管理のミスで、サワー種も初種も全部ダメにしました。とあるお店のカフェメニューにするために仕込んだもので、絶対失敗しちゃダメなやつだったのに…。苦い経験です(余談)。
というわけで、「加塩法」に行きつきました。
加塩法なら、厳密な温度管理がいりません。完成したサワー種は3日以内なら常温放置OK。他の方法には無い「塩の計量」が必要とは言え、これくらいの手間ならかける価値が十分ある、と思っています。
成形、道具、材料など
成形とは、生地を目指す形に仕上げていく作業です。
成形法、手先の使い方、形状は様々であり、生地の状態によっては手粉や水を使います。手数はできるだけ少なく、ねかせ時間の長いものから取り掛かると良いです。
ライ麦パンは、小麦パンに比べるとシンプルな形が多く、カットするだけ、型に入れるだけといったものも多いですが、その分、生地の仕上がりが最終的な焼き上がりに直結するとも言えます。
慣れないうちは手袋着用をおすすめします
写真はある日のレッスン風景
成形例
ライ麦70%
トッピングはナッツやドライフルーツ、チョコチップなどをお好みで
ライ麦70%
鶏卵と背比べ…
ライ麦70%
一度は試して頂きたい切りっぱなし成形
ライ麦100%
表面にはナッツとスパイスをお好みで。
写真はフィンランドの穴あきパンをイメージしています
小型パンはぜひ焼き立てをどうぞ!
主な道具と材料
左から…
・デジタルスケール
・フタ付き容器500ml
・計量カップ
・スプーン
サワー種の容器
岩崎工業 食品保存容器
スクリュートップキーパー
を使っています
写真はシモジマという資材専門店のもの
Amazonや楽天でも購入できます
ライ麦粉
・ライ麦全粒粉 中挽き
・ライ麦全粒粉 細挽き
基本的には全粒粉を使用しています
ナッツ類
・アーモンドスライス
・カボチャの種
・ひまわりの種
トッピングにもフィリングにも使います
ドイツパンは難しい…?
さて、サワー種仕込みのライ麦パンのことを書くにあたり、もう少し掘り下げていきます。とても大切な部分だと思っているからです。また、当教室の思いも併せて書いておきます。
「ドイツパンは難しい」
よく耳にします。実際その通りです。
でも、作業の1つ1つを見れば、さほど難しくない事も多い。
初種作りやサワー種の仕込みも、やる事は容器に粉と水を入れて混ぜるだけです。少し手間は要りますが…。
なのに、なぜ、「失敗」や「諦め」の声が多い上に「そもそも手を出さない」人が少なくないのでしょうか?
個人的には「正解が分からないから」ではないか、と考えています。
小麦パンの場合、作る環境(電気オーブン、ガスオーブン、手ごね、ミキサーなど)や条件(暑い、寒い、長時間、短時間、多い、少ない、材料など)によって、どんなパンが焼けたら理想的なのか?と疑問が湧いたら、ネットで調べれば答えの近似値を得られることが多いです。そして職人や専門書のみならず個人の公開事例も多い。種おこしが初めての方でも、小麦パンであれば比較的ハードルは低いと思います。
一方で、サワー種仕込みのライ麦パンには、それが無いのです。
無いというか、あるにはあるのですが、数が少ないため、作る人の環境によっては全く参考にならないか、もしくは分厚い専門書から必要な記述を探し出し、何冊も読み込んで自分なりに落とし込んでいく作業が必要だったりします。
パン屋さんにせよ個人にせよ、パン作りの環境は実に様々。パン作りを始めた年齢も、焼きたいライ麦パンも人によって違うし、作り方を教える人と学ぶ人の環境も異なる。「正解」というより、「自分なりの最適解」を見出し続ける。サワー種で仕込むライ麦パンを焼くにあたり、この(禅問答のような)感覚にいきつくまで、私はずいぶん回り道をしたように思います(とは言え、まだまだ未熟。いつかは「自分なりの正解」が欲しいところ)。
最後に ~レッスンについて~
私の場合、手探り状態から始めて今に至るまで、「個人」で「小ぶりでシンプルなもの」を「ドイツパン好きな人(自分も含む)」のために「手間ヒマは程々に」して「おいしく焼きたい」という思いで続けております。
レッスン内容も、自然とそのような方向性になると思います。これぞドイツパン!な迫力ある大型パンを焼きたいという方には物足りないかもしれませんが、「ドイツパンが好き」から始まるつながりは広げていきたい。私の失敗談や成功例を惜しみなくお伝えし、お客さまのライ麦パン作りの一助になるようなレッスンに育てていきたいと考えております。
「1回完結 サワー種仕込みのライ麦パン」レッスン、ぜひお試しくださいませ。
【 今期受付終了 】1回完結 サワー種仕込みのライ麦パン
今期の受付は終了しました
次回の募集までしばらくお待ちください
お問合せは随時受け付けております
【 ドイツ製パン 】
1回完結 サワー種仕込みのライ麦パン
お1人様¥5000(税込)
・ブレートヒェン(ライ麦70%)を焼きます
・加塩法について
・サワー種の調整
・初種の起こし方 など
※ レッスンで仕込んだ種はお持ち帰り頂けますので、ご自宅でも継続して練習できます
※ このレッスンでは専用の容器を使用します
サワー種の容器
「1回完結 サワー種仕込みのライ麦パン」のレッスンで使用します
岩崎工業 食品保存容器
スクリュートップキーパー 500ml 深型
写真はシモジマ(資材専門店)のもの
Amazonや楽天でも購入できます
当日お持ち帰りに必要な容器はサワー種用1個、初種用1個で最大2個です。在庫があれば当教室でご購入頂けます(お問合せください)
お手持ちのものをご持参いただく場合、同じ商品でなくても構いませんが、フタ付きで容量500ml程度の縦長容器(2個)をお願いします